風のブックマーク2004
「雑誌」編

 

芸術新潮9『梅原猛の円空巡礼』


2004.9.18

■芸術新潮9月号
 特集『梅原猛の円空巡礼』
 
この芸術新潮というのは、毎月買おうとは思わないけれど
ディック・ブルーナ特集があったり、有元利夫特集があったりと
たまにはチェックしておくといい雑誌なのかもしれない。
 
今回も『梅原猛の円空巡礼』という特集が目に留まり
円空の仏像の写真がたくさん載っているのをながめているうちに
ひさしぶりに買ってみることにした。
 
梅原猛さんもますますお元気そうでなにより。
その根本にある認識の部分については
その少し古代向きのところが気になりはするものの
それでもこの大きな魂のエネルギー体は大いに尊敬せざるをえない。
 
梅原猛さんからぼくがいちばん影響を受けた著作といえば
法隆寺ネタやらいろいろあるものの、
そういえば、やはり角川から出ていた仏教シリーズだろうなと思う。
その後、文庫化されて手軽に読めるようになって
あらためて全巻を読み直したこともあったりする。
 
梅原猛さんの描く仏教観にはかならずしも賛同しかねるところはあるものの
仏教全体を概観させてくれたのは
ぼくにとってはそのシリーズであったことは疑いない。
 
ところで圧倒的な円空仏である。
ぼくは実際の円空仏をまだ見たことがない。
できれば実際に見てみたいものだとも思うのだが、
所蔵されている寺などがあるのが多くは関東方面のようなので
なかなかそうもいかないようである。
とりあえずは、こうして素晴らしい写真の掲載されている
雑誌などからその円空の「気」を感じとることにしておく。
 
ぼくが円空について知っているのは
長谷川公茂『円空仏』(保育社カラーブックス)に
書かれていることを越えるものではないので
こうした特集などをおりにふれて目にすることで
その円空仏の「形」をみずからのなかで
ある理念として成長させてみたいと思っている。
 
この特集の最後に梅原猛さんは
「我々は法の道を絶やさないためにも
円空を復興する必要がある」
と書いている。
むずかしいところである。
 
梅原猛さんの他の著作でも感じることだけれど、
未来を語るとき、どうしても過去向きになっているところがある。
さまざまな過去の遺産を慈しむほうに向かっていく。
もちろんそれは必要なことなのだけれど
重要なのは「法の道を絶やさない」ことではなく
その表現を使っていえば「法の道を展開させていく」
という方向なのではないかと思えるのである。
 
 

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