風のブックマーク2004
「言葉」編

 

白川静『常用字解』


2004.1.14

■白川静『常用字解』
 (平凡社/2003.12.18発行)
 
今日(2003.1.14)付の朝日新聞の
聞き書き・繰り返し見る夢シリーズの5回目として
白川静さんがとりあげられている。
最後までできるかどうか、といっていた
88歳のときから5年計画ではじめた連続講座「文字講話」も完結。
現在93歳で、さらに今年の秋からその「文字講話」が再開されるという。
 
その記事の最初に、「夢」という字がとりあげられている。
 
        「夢」という字は、あまり快い字ではない。目の上に眉飾りをした、
        呪術力を持つ女シャーマンが、睡眠中に忍び込んできて心を乱すと
        いうもの。元々夢は、現実に影響力を持つものとして恐れられてい
        た。
 
「夢」はさまざまなとらえられかたをする。
シュタイナーはあまり夢の積極的な力について語らないが、
古代においては夢占というのはとても大きな意味をもっていたようである。
少なくとも、「あなたのことを夢にみないのは
あなたがわたしのことを気にかけていないからだ」
ということがいわれたりもするくらいだった。
古代は現代よりも夢見る意識に近いところがあったので
それはより現実的なものとして現われてきていたのかもしれない。
 
現代では、夢というとフロイトやユングなどの心理学的な方面で
あらためて重視されたりもすることがあったり、
ニューエイジ的な文脈では、夢で自分の手を見る、
といったような夢の積極的なありようについていったりもする。
 
それはともかく、この項でご紹介することにしたいのは、『常用字解』。
白川静さんは『字統』『字通』『字訓』という三部作をつくったが、
本書は、常用漢字にしぼって、漢字の成り立ち、字形と意味との関係が
コンパクトに解説されている漢字の入門字典になっている。
ほしいほしいと思いながらまだ手にいれていない三部作だが、
この『常用字解』は手頃なので早速手に入れ
思うままに字をひいて楽しんでいる。
その「夢」の字についてももちろん上記の引用のような意味が
コンパクトに解説されていて、ちょっと思いがけないけれど、
説明されるとなるほどと納得してしまう意味にうなってしまう。
 
せっかく漢字というとても豊かなものを
日本では使っているのだから
その宝物をもっと見直してみる必要があるのだろう。
そういう意味で、現代において白川静さんの存在意義はすごく大きい。
それに、白川静さんのような方がいるというだけでも、
ぼくも90歳までにはまだまだたくさん時間がある、というか
日々坦々とやっていれば何かが得られそうだという、
希望の原理?を持てるのでとても励まされる。
 
 

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