風のブックマーク2004
「医学」編

 

ペットのためのホメオパシー


205.7.26

■クリストファー・デイ
 『ペットのためのホメオパシー/ペットオーナーと専門家のための理論と実践』
 (ホメオパシー出版/塚田幸三訳・由井寅子日本語版監修/2005.7.15.発行)
 
やっと日本でもホメオパシーが少しずつ紹介されてきていて、
そのなかでもこのホメオパシー出版は注目すべき活動をしている。
シュタイナーの『健康と病気について/精神科学的感覚教育の基礎』も
この出版社からすでに訳されているように、
ホメオパシーをただ礼賛するだけが目的ではなく、
「なぜホメオパシーなのか」ということを
さまざまな角度から検討できる資料が次々と出版されようとしているようである。
 
ホメオパシーではその働きを「バイタルフォース」ということでしか
説明していないようだけれど、ホメオパシー出版の視点では、
シュタイナーの医学文献を訳されたりしているように、
もっと幅広い理解と応用を意図しているように見える。
できれば漢方などとの関係も明らかになればいいとも思う。
http://homoeopathy-books.co.jp/
 
さて、本書は、『シュタイナー医学入門』(マイケル・エバンズ/イアン・ロ 
ッジャー著)を
訳された塚田幸三さんが手がけられた動物のホメオパシーに関するもの。
ホメオパシーは人間だけを対象としているのではなく
動物のためにも用いられることも忘れてはならないところである。
塚田幸三さんの経歴を見ると、「英国エンジバラ大学獣医学部修士課程卒業」とある。
やはり動物医療への関心から訳すことになったのだと推察されるが、
今回の訳書の原書に出会ったのは、
シュタイナーの世界理解と動物との関係を扱った本を探していたときだったそうだ。
また、同じホメオパシー出版から続いて、
キャンプヒルのカール・ケーニッヒの「 the animal and their destiny」という
1963年の講演録(2002年に出版)も翻訳予定だということ。
なお、『シュタイナー農業入門(仮)』(地湧社、近刊)も翻訳中とのことだが、
塚田さんはそもそも 農学関係が専門だったようで、農業に医学に、
これまであまり日本では紹介される機会のなかった部分が
着実に紹介されてきているのは非常にうれしいところである。
 
今回の翻訳も前回の『シュタイナー医学入門』同様、
非常に端正で的確な日本語になっているのも
こうした専門書を翻訳で読む際に大変心強いものがある。
 
さて、本書を読みながらいくつか興味深く感じた点などについて少し。
 
本書ではホメオパシーについての基本的な視点が
最初にきちんと説明されている。
単なるノウハウ本ではないところがまずうれしい。
 
通常、ホメオパシーの専門家というと、
漢方や針治療などとの関係をあまり言及したがらないようだが、
本書では、鍼治療とホメオパシーを同時に使うと混乱するかもしれない
というあたりの話もでていて面白く思った。
本書のサブタイトルに「ペットオーナーと専門家のための理論と実践」とあるが、
ホメオパシーを用いる際にも、(ほかのどんなことでもそうだが)
理論と実践というのはとくにわけられるものではない。
ノウハウで結果だけを得ようとしても
それは結局のところファーストフード的な食事のようになってしまい、
ホメオパシーはそうした自動販売機のようにして
治療を受けるというような在り方とは対極にあるのである。
そういう意味でも、ホメオパシーを理解することと
治療を受けることとがうまくかみあっていくのが好ましいし、
盲目的なホメオパシー信仰のようなものにも注意したいところでもある。
 
さて、動物のホメオパシーということだが、
人間と動物のホメオパシーの作用の違いなどについては
今読んだところではよくわからなかった。
シュタイナーは、人間と動物は90度、人間と植物は180度違う。
まり、植物と人間は逆転しいているということ(つまり頭は根と相関する)
というふうにいっているが、ホメオパシーにおいて
人間と動物はどう異なっているかというのは大変興味深いところである。
ところで、本書のなかで犬と猫では違うというような記述もあり、
動物の種の違いによるホメオパシーの作用の違いというあたりも気になる。
 
 

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