風のブックマーク2004
「神秘学」編

 

岡田明憲『ユーラシアの神秘思想』


2005.8.15

■岡田明憲『ユーラシアの神秘思想/古代ローマから日本にかけて展開する精 
神文化の源流』
 (学研/2005.8.1.発行)
 
岡田明憲といえば、ゾロアスター教研究で知られ、
『ゾロアスター教ーー神々の賛歌』、『ゾロアスター教の悪魔払い』、
『ゾロアスター教の神秘思想』などの著書も書店で手に入れることができる。
というか、岡田明憲以外のゾロアスター教関係の著書があまりないのが現状。
 
ゾロアスター教については、日本ではあまり知られていないが、
本書を読み進めていくことでもわかるように、
ある意味で、「ユーラシア」の古層には確実にゾロアスター教があり
大乗仏教や密教、イスラム教、キリスト教などは確実に
ゾロアスター教の影響を強く受けているといえる。
もちろん、マニ教はいうまでもない。
 
ゾロアスター教のことからはじめてしまったが、
本書はゾロアスター教についての本ではもちろんない。
ヨーロッパとアジアをふくめた「ユーラシア」大陸において展開してきた
「精神文化」としての神秘思想を多角的に比較検討し
その源流について検証しようとしているものである。
 
多角的に、ということをわかりやすくいえば、
本書の章立ての項目を挙げればわかりやすいだろうか。
「身体の秘密」、「鍛錬と性愛」、「占いの世界」、
「ことばと象徴」、「仏・悪魔・超人」。
こうした項目事に、さまざまな神秘思想が紹介・検討されていて、
よくある種の単なるアンチョコ紹介ではない。
 
ある意味、本書は、真性の「読む神秘学辞典」とでもいえるかもしれない。
本書は500ページほどの大部であるけれど、
読み進めるうちに、それぞれの項目を通じて、
さまざまな展開を可能にできるだろうし、
なにより500ページほどの長さを
興味深く読ませてくれるようなこうしたまとまった著書は稀である。
 
もちろん本書は、シュタイナーが講義などでも展開しているような
神秘学そのものへの深部にまでは届いていないだろうし、
ある意味で資料として調べることのできる範囲を超えないだろうけれども、
これだけのものをまとめあげることができているのは特筆すべきことだろうと 
思われる。
 
シュタイナーを読み進める上でも本書はかなり参考になる。
グノーシスやマニ教、善と悪の問題などを考えていく際の
有効なガイドにもなりえているであろうし、
シュタイナーでは言及されていない東方との関連性を見ていく際にも有効であろう。
 
ぼく自身、本書で善悪等に関して言及されていたゾロアスター教の宇宙観など
シュタイナーはあまり深く展開していない部分に関して
あらたな検討課題を得ることができて大変有益な時間を過ごすことができた。
今後も、神秘学の基本書参考書の一冊として手元に置いておきたいと思っている。
 
 

 ■風の本棚メニューに戻る

 ■神秘学遊戯団ホームページに戻る