風のブックマーク2004
「神秘学」編

 

はるあきら/安倍晴明との対話


2005.5.28.

■七浜凪『はるあきら/安倍晴明との対話』
 (ナチュラルスピリット/2005.4.5.発行)
 
「安倍晴明との対話」というから
安倍晴明のチャネリングものかと思ったらその通りだった。
とはいっても、安倍晴明ならではの陰陽道について云々というのはまるでなく、
むしろ、著者との魂の対話とでもいえる至極まっとうな内容になっている。
 
あえてご紹介するまでもないかとは思って少し迷ったものの、
ここにでてくる「はるあきら」(安倍晴明のこと)の語ることが、
どこかシュタイナーの示唆しているミカエルと非常に似ているところがあるので
そこが妙に気に入ってしまって、ご紹介してみる気になった。
この著書のストーリー的なものは
ご説明するにはあたらないとは思うのの、
「はるあきら」のことばはなかなかにいいので、
少しなかり(ランダムではあるけれど)ご紹介してみることにする。
(引用中「かさね」というのは、著者に呼びかけるときの名前である)
 
	相手ではなく、事の真理、そして自分の真理を見よ。情に脅かされては
	ならない。おまえが相手を思えば思うほど、相手の波長とつながり、情
	が流れ、相手の思いが入って来るのだ。断ちきりなさい。チャンネルを
	変えよ。余計な情は入らぬ。断ちきって自分に戻るのだ。これが学びだ
	ということを忘れてはならぬ。
 
	必要なのは『情』ではなくて『愛』だ。
	・・・
	つまらない情で相手に手を差し伸べるなぞ、傲慢以外の何者でもない。
	みな、自分の足で立つのだ。
 
	おまえが私に尋ねなければ、答えることができないのだ、かさね。その
	プロセスはおまえだけに用意されたものなのだ。私であっても、助ける
	ことはできない。誰もが一人一人、こうしたプロセスを何度も重ねて高
	みに登ってゆく。尊く、大切なことなのだ。
 
	私はかつておまえより、魂を感じやすい所にいた。そして、自分が人間
	の部分が少ないことを知った上で生きていた。上の部分が開き、他の次
	元とつながることを自分でコントロールできてもいた。一方で人の産み
	出す情念の重さに辟易し、人間という存在にあきれ果ててもいた。己の
	私利私欲のための人を憎悪し、嫉妬し、他と自分を比較する。だから私
	は人の情念を落とす修行をし、揺れない魂をつくりあげようとした。
	・・・
	私は既に自分の体の地から天へエネルギーが通っていた。それなのに、
	それだけではダメだといわれ、さらに強く地と結び付けられた。それを
	言われた時は屈辱であったよ。
	・・・
	地と強く結びつくということは、私がくだらないと思っていた人間界に
	自らを委ねるということだからだ。私はもっと高次の次元とつながりた
	いと常に思っていた。それなのに、この地に開け渡さねばならなかった。
	ところが、この『委ねる』ということがミソだった。
 
	かさね、娘はおまえの所有物ではない。娘であれ、家族であれ、魂はみ
	な別々なのだ。一人に一つずつ。決して重ならない。たとえ似た要素を
	持っていたとしても、魂も、用意されたプロセスも、一人一人、別なの
	だ。おまえと娘の学びはそれぞれに違う。同じ人生を歩むわけではない。
 
	エゴから入っていくしかないのだ。
	・・・
	エゴに入り、浸らなければ、純粋なる魂を見ることはできぬのだ。わか
	るか、かさね。人と接し、生活する中で受ける様々な感情にまみれても
	尚、あり続ける己の姿を見なくては。たくさんの削ぎ落とされるべき垢
	がついているのだ。それを削ぐための場が、こうやって日々用意されて
	いる。それを実感して生きよ。
 
・・・とまあ、こんな感じで、
いわば、ニューエイジ風の「魂の教え」には近いのだけれど、
ルシファー的でもアーリマン的でもなくその「中」にあり、
しかも、この地上におけるエゴの役割もきちんと踏まえられているのがうれしい。
 
ちなみに、シュタイナーの示唆しいているミカエルと似ているというのは、
血縁そのもののつながりを基本的に切っているところや
自分で立たなければなにもはじまらない、
しかもきわめてクールななかに「愛」があるというあたりだろうか。
地におけるプロセスを重視するところなどは、まさにキリストにつながってい 
るところもある。
 
まあ、あえて探して読まなくてもとは思うけれど、
つまらないお話を読むよりはずっと心にふれてくることは確かのような気がする。
しかも、本書では、この2005年というのが非常に重要だと示唆されている。
 
おそらく、ある意味、腹をくくって、
自分を見据えなければならないということのようである。
それはまさに「汝自身を知れ」ということにもつながる問題だろう。
その困難さも含めて。
 
 

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