風のブックマーク2004
「神秘学」編

 

フランシス・エドマンズ
『考えることから生きることへ』


2005.5.27.

■フランシス・エドマンズ
 『考えることから生きることへ
  ルドルフ・シュタイナーの思想を現代に生かす』
 (中村正明訳/麗澤大学出版会 2005.5.27.発行)
 
シュタイナーの良き入門書を見つけるのはとてもむずかしいと感じていたが、
おそらくこれは、シュタイナーを読む際のガイドとしては
少なくともぼくがこれまで知っているなかでは最良のものではないかと思われる。
訳者は、シェパードの『シュタイナーの思想と生涯』の訳者でもある中村正明 
氏である。
 
フランシス・エドマンズは医者でありまた教育者でもあり、
教育に関する著書もあるということだが、
おそらくそれも適切な内容になっているのだろうと推察される。
 
日本では、どうもさまざまな霊的な説明が排除される傾向にあるのだが、
本書では、秘儀参入のことや宇宙進化をはじめ、キリストやミカエルのことなど、
真正面からきちんととりあげられていることに加えて、
それが単なるレジュメのような仕方でまとめられているのではなく、
著者なりのことばで叙述されていて小気味いいほどである。
 
最初は、「シュタイナー自伝」をガイドにしながら、
シュタイナーの歩みについて短いながらも、
ゲーテや自由の哲学を軸に紹介された上で、
それをもとに高次の認識の道としての人智学の基本が描かれている。
そして、「人間の本質」について基本的なところがわかりやすく説明され、
それをもとに、宇宙の歴史をふまえながら、
私たちがこうして生きてあることにつながる「人間」の歴史の意味が明らかにされる。
そして、現代という時代がキリストおよびミカエルとの関係で描かれ、
これから未来にむけて人智学がどのように展開していくのか、
私たち自身の問題として提出されている。
 
これを読むことで、シュタイナーの著書・講演録のどれにでも
比較的抵抗なく入っていけるのではないだろうか。
まさに「入門書」という位置づけの役割をきちんと担っている著書である。
 
英語からの訳ということもあるのか、
これまでの訳語とは少しニュアンスの異なるところや
比較的散文的ないいまわしなど少し気になるところも確かにあるのだけれど、
上記、シェパードの『シュタイナーの思想と生涯』とともに、
非常にうれしいシュタイナー関係の邦訳基本文献として
読み継がれていってほしいと思う。
 
 

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