風のブックマーク2004
「思想」編

 

河合隼雄『ケルト巡り』


2004.2.7

■河合隼雄『ケルト巡り』
 (NHK出版/2004.1.30発行)
 
坂田靖子の『ビギン・ザ・ビギン(1-4)』(潮マンガ文庫)を読んでいたら
返事する石、ストーン・ヘンジなる石のキャラクターがでてきて、
yuccaときゃははは笑いあっていたところ
(坂田靖子のマンガのダジャレと化け物に満ちた世界はほんとうに楽しい)
その本物のほうのストーン・ヘンジもでてくる
河合隼雄さんの『ケルト巡り』が出た。
 
NHKのハイビジョンスペシャル(2001.10.31)で
このケルトを巡る旅については
すでに「河合隼雄 ケルト昔話の旅」というのも放送されたらしいが
本書にはテレビ番組では放送しにくい、
魔女やレイラインなどのことも盛り込んでいるということである。
実際、魔女との対話も載っている。
(とはいえ、魔女というイメージはあまりないのだけれど)
 
少し前に『ナバホへの旅』というのもでていたが、
河合隼雄さんの最近のアプローチは、
いわゆる西欧型のグローバリゼーション的な在り方ではない文化を
実際に訪ね、「キリスト教以前のこと」にふれることで、
「これから」のことを考えようとしているもののようである。
 
河合隼雄さんの試みはきわめて現実的であって、
なにか明確なテーゼなどをぶちあげて
それですべてを説明してしまおうというのではなく、
意識・無意識、科学・非科学という対立しがちなものを
どうやったらつなぐことができるかを模索し、
その両者のバランスと統合のなかで
「これから」の在り方について考えていこうとする。
 
        意識・無意識で言えば無意識、科学・非科学で言えば非科学の
        方が、人間が生きるうえでの土台たり得る。それを意識や科学
        とどうつなぎ、どう統合するか。そこが問題なのだ。
        (P197)
 
もちろんそのアプローチは神秘学的なものではないので、
ある部分、もうひとつ踏み込めばいいのに、と思うところが
たくさんあるのだけれど、その踏み込まない、というあたりが
河合隼雄さんならではなのかもしれない。
もし踏み込みすぎてしまうならば、おそらくは
アカデミズム的なものから切れてしまうのだろうし、
間違うとかなりオカルティックなものにもなりかねなくなる。
この河合隼雄さんのようなアプローチでさえ、
ふつうの基準からいえば、かなり踏み込んだことなのだから。
 
一般常識とされているものは、あまりにスクエアで
どうしようもないほどに頑迷な枠のなかにあるけれど、
その逆に、ニューエイジ的なものの多くは
あまりに現実離れしてしまっている。
そういうなかで、河合隼雄さんのこの柔軟さ、
もちろん中心にしなやかで強靱な核を持ちながらの在り方が
現代という時代にはもっとも求められているということなのだろう。
 
 

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