風のブックマーク2004
「思想」編

 

『フィールド 響き合う生命・意識・宇宙』


2004.11.13

■リン・マクタガート
 『フィールド 響き合う生命・意識・宇宙』
 (野中浩訳/発行:インターシフト 発売:河出書房新社 2004.11.30発行)
 
時代は確実に変化に向けて急速に動き出している。
そしてその動きが急になればなるほど、
その逆の力もまた強くなるという現象も起こってくる。
 
量子力学によって明らかになったのは
「唯物」ということは成立しないことだったはずなのだけれど、
そして観測者問題というのもとても重要なはずなのだけれど、
実際のところこの世界はきわめて唯物論的に信仰されている。
と同時にまたファナティックなまでの信仰もまた進んでいる。
おそらくその二つの力というのは逆のように見えて
その実どちらもが手を携えているのだともいえるかもしれない。
それはアーリマンとルシファーのようなもの。
私たちは今まさにその二つの力の間の
暴風雨にさらされているように見える。
 
本書は、新しい認識・新しいパラダイムに向けて
実際には動き出している科学が
さまざまな抵抗を受けながら「夜明け」を迎えようとしている今の
ルポのような内容となっているようにぼくには感じられた。
そのなかにはホメオパシーに関するテーマもあり、
どれも興味深いものだったが、読み進めているなかで常に感じていたことは、
現代の科学がいかに「実験」や「データ」に呪縛されているかということだった。
ここで紹介されている新しい科学へ向けての挑戦も
きわめて根気強くなされ続ける「実験」や「データ」を通じてなされてきている。
それはそうした新しい科学に対する、ほとんど感情的なまでの抵抗勢力が
「証明」を求めているからでもあるだろう。
もちろんその「抵抗勢力」というのは、おそらく
その新しい科学を模索する人のなかにも存在していて
それを克服するためにも、「実験」や「データ」という裏付けをもって
なんらかのジャンピングボードにする必要があるということなのかもしれない。
 
しかし、新しい認識への道に対する頑ななまでの抵抗勢力というのは
むしろその情熱がどこからくるのかを疑いたくなるほどのものだ。
たとえばホメオパシーの効果を証明しようとする動きに対する
『ネイチャー』誌の反動というのもほとんどそれこそが狂信のようでさえある。
まるで魔女狩りである。
すでに決まったものと見なされていることに対しては
まったく批判の矢が届かないのだけれど、
その「常識」に少しでも反するものに対してはその逆になる。
 
夜明け前というのは、冬でももっとも冷える。
あたたかい布団から出るのもつらい。
だから布団からでないためのさまざまな口実を思いつく。
しかしやがて否応なくそこから出なくてはならないときがくる。
 
そしてその夜明け前の時代である今のさまざまなプロセスそのものこそが
きわめて重要であることに気づくことのできる時代も訪れるだろう。
そのプロセスなくして何も学ぶことはできないのだから。
本書には科学におけるその変革のプロセスについて
ほとんど実況中継のように記されている。
なぜそこまで頑張ってしまうのかと思えるほどの人たち。
そういうたくさんの人たちの力が集まって
これから少しずつ何かが変わっていくのだろうと期待したい。
 
最後に本書の最初と最後から引いて、紹介に代えたい。
 
	 私たちはいま、ある革命の夜明けの時代にいる。それは、アインシュタイン
	の相対性理論と同じくらい、根源的で斬新な革命である。科学の最先端領域で
	は、この世界がどのように成り立ち、また私たち自身がどのような存在である
	かについて、これまで信じられてきた土台に根底から疑問を投げかける新たな
	考えが浮上している。宗教が常に信奉してきた考え、すなわち、人間は単なる
	肉と骨のかたまりをはるかに超えた並はずれた存在である、という考えをうま
	く説明する発見が次々になされているのだ。この新しい科学は、その根源にお
	いて、過去の科学者たちを何百年も悩ませてきた疑問に答えを出している。そ
	れはつきつめれば、奇跡を科学しているのである。
	(P10)
	科学においては、抵抗こそがつねに王道である。新しい考えはつねに異端と見
	なされてきた。彼らの証拠は世界を永久に変えてしまっても不思議はないもの
	だ。たしかに、もっと洗練させるべき領域も多いし、探索すべきほかの道もあ
	る。その多くは結局のところは迂回路になるかもしれないし、袋小路かもしれ
	ない。しかし、ともかくも試験的な探求は始まっている。それは始まりであり、
	最初のステップであり、すべての真の科学が始まる道である。
	(P322)
 
ちなみに、本書についての詳しい説明が以下のアドレスで読むことができ、
また本書の最後に載っている「解説」もpdfで読むことができるので、ぜひどうぞ。
http://www.sustaina.com/book/fieldbook/index.html
 
PS
本書は、このMLにも参加してくださっている方の関わっている本で、
その方からわざわざ送っていただいた。
認識の変革をテーマとしたニューエイジ的な書物は数多くあるが、
こうした実際の科学の現場で起こっている「事件」というか
その変革のための努力のプロセスともいえるものを
まとめて描いてくれるようなルポは少ないようである。
その点でもとても貴重な記録を読むことができて
ご厚意には大変感謝している。
 
ひとつだけ難をいうとしたら、表紙カバーのデザインがとても地味なので、
せっかくの内容への導入力が弱くなっているのではないかと危惧される。
 
最初探したときはまだ書店に並んでいなかったのを
昨日見てみたら「精神世界」のコーナーではなく、
ちゃんと科学書のコーナーに置かれていた。
 
 

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