風のブックマーク2004
「思想」編

 

暮らしの手帖「花森安治」


2004.1.20

■暮らしの手帖 保存版III
 「花森安治」
 <常識>を<非常識>に一変させた生活思想
 (暮らしの手帖社/平成16年1月1日発行)
 
高校生の頃、ラジオの深夜番組で、声優の野沢那智が
「花森安治」という名前と
「一銭五厘の旗」という著書のことを
「女がズボンをはき、男がすかーとをはいているのが
むしろ論理的でもあり、科學的でもある」
というような言動さえとるような人でもあると
親しみを込めて紹介していた。
もう25年以上前のことになる。
 
それが「花森安治」との最初の出会いである。
そのときには「暮らしの手帖」という雑誌のことも
もちろんまったく知らずにいたし、
「暮らし」という言葉そのものにも
あまり好感をもってはいなかった。
もっとも、いまだに、「暮らし」とか「生活」というのは
あまり好きだとはいえないところがある。
しかし花森安治のことを知ることで、
そこに開けている何か不思議な地平のイメージを
そのときにもったことはいまでも記憶に残っている。
 
その後、花森安治のことをとくに深く調べてみるでもなく
ふと手にとったのがこの暮らしの手帖の保存版。
その生涯のこともこれでようやくわかり
ずっとどこかぼくのなかで謎になっていたものに光があたり
そのことでまたぼくのなかにもう少し進んだ形の謎が
あらたに芽生えてくるきっかけになりそうである。
 
この特集号の副題に
「<常識>を<非常識>に一変させた生活思想」とあるが
編集後記にある次の言葉を
21世紀に入って生きている私たちは
あらためて問い直してみる必要があるのかもしれない。
 
        自分の人生をどう生きるか。これは戦後の日本人が求めつづけた
        大きなテーマである。これに花森安治は、かつての生活常識を捨
        て、新鮮で合理的なライフ・スタイルを提案しれてみせた。いま
        までの常識が非常識になって、これからは非常識が常識となる…
        …。花森安治はマジシャンのように、あっさりと価値観をくつが
        えしてみせたのである。
 
戦後、ライフスタイルは大きく変化したようだが、
ぼく自身のことをふりかえってみても
そういえば変化は少ないとはいえない。
たとえばこうして使っているパソコンひとつとっても
これがあるかないかではライフスタイルは大きく異なる。
ぼくの大学の頃の授業で情報処理というのがあったが
その頃はまだパンチカードを使っていたりした。
卒論なども手書きで、外国語の部分だけをタイプライターで打っていた。
巷ではようやくテレビゲームなるものがブームになろうとしていた。
平安京エイリアンやパックマン、ファミコンゲームなどが流行しはじめ
そういえばその後、すぐに実用とはいかなかったが
あれよあれよといううちにパソコンが普及し、
ワープロが使えるレベルになり、
そのうちパソコン通信がはじまり(ぼくがはじめたのが12年前)、
そうしてこうしたインナーネットがまたたくまに広がった。
 
こうしたなかで、ただ流されるように
時代の流れに押し流されていくのではなく
むしろ積極的になにかをつくりだしていかなかればならない大事な時期に
今さしかかっているようにも思える。
そんななかで花森安治の仕事を見直してみることは
なんらかの示唆になるのではないだろうか。
 
 

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