風のブックマーク2004
「芸術」編

 

赤瀬川原平・山下裕二『日本美術応援団』


2004.6.21

■赤瀬川原平・山下裕二『日本美術応援団』
 (ちくま文庫/2004.3.10発行)
 
山下裕二の名前をはじめて目にしたのは
一昨年、山口市で開催された『雪村展』の監修者としてだった。
 
この『雪村展』は、前期・後期の展示に分かれていて、
ぼくが見ることができたのは後期展示のみ。
ちょうど山口市で仕事があってそのうち合わせをしている間に
その『雪村展』を発見しその前期展示を見てきたのはyuccaで、
仕事が終わった頃にはすでに開巻時間は過ぎていた。
そのカタログを見て、後期展示には必ず!とリターンマッチ。
その展示はほんとうに楽しかったのを今でも憶えている。
 
その影響もあって、その後水墨画やら浮世絵やらを見はじめ、
やがて富岡鉄斎に驚喜することになる。
富岡鉄斎を見て歩いていた頃
ちょうど松岡正剛の『山水思想』が出たのも好都合で
一年前頃は、ぼくの頭のなかは、しばらくは水墨画関連が占めていたくらいだ。
 
その後、今年の芸術新潮3月号の特集が
『おとなのためのディック・ブルーナ入門』で、
その号に、鉄斎の富士をテーマとして、
赤瀬川原平と山下裕二の『日本美術応援団』の記事があり
大変面白く読んでいたところ
しばらくしてこのちくま文庫の『日本美術応援団』がでた。
ちょうど転勤さわぎでそのままになっていたのを
少し落ち着いて絵を見る余裕もでてきたので
先日来読みすすめてみると、これがなかなかの面白さ。
あっという間に読んでしまうことになった。
 
山下裕二という人は、昨年の夏に出た別冊太陽の
『水墨画発見』を編集していることでもわかるが、
日本画を面白く見るためのいろんな視点を提供してくれる。
赤瀬川原平との対話ではさらにその個性が味わい深く楽しめる。
プロフィールを見てみるとぼくと同い年だ。
しかも生まれは広島県の呉とある。
(そういえば、(関係ないが)トポスのHPにシュタイナーの翻訳を載せている
佐々木義之さんは、昨年からその呉に転勤してきている。)
 
それはともかく、この『日本美術応援団』は
『日本美術』というものを固定観念を外しながら
楽しく見ていくためには格好のガイド?になると思える。
少なくともぼくにはそのように働いている。
もちろんぼくが気に入るくらいだから、
おそらくはそこで話されているのは、
「乱暴力」というキーワードが連呼されているように、
あまりアカデミックな視点ではないのだろうが。
 
この『日本美術応援団』の対話が実現するきっかけになったのは
赤瀬川原平の『名画読本・日本画編』だったそうだが、
なぜかぼくも大変面白く読んだ記憶がある。
かなり前のことだったと思うが、
その本を面白く読んだわりには「日本画」にあまり近づくこともなく、
ようやくこうしてここ数年来、その面白さがじんわりとわかってきたところである。
なにかが熟してくるのには、とても長い時間が必要になるのがわかる。
ひょっとしたら今生きている間には熟さないかもしれないものもあるが、
やはり何にでも関心を持っておくとそのうち面白いこともでてくるかもしれない。
 
で、昨年からyuccaがシュタイナーの『内的霊的衝動の写しとしての美術史』を
訳しはじめているが、ようやくここにきて、洋の東西を問わず、
美術に関する何かがぼくのなかで少しは熟してきたということなのかもしれない。
そういうなかで、やはりこういう対談は気軽に読めて
しかもそのなかででてきている視点のいくつかにどきりとさせられて誠に楽しい。
先日、この赤瀬川原平・山下裕二の『日本美術観光団』とかいうのもでていたが
こういう楽しい企画は一度目にするとなかなか癖になりそうだ。
 
 

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