風のブックマーク2


 川端裕人『ペンギン大好き!』


2005.10.7.

■川端裕人『ペンギン大好き!』
 (新潮社・とんぼの本/2002.8.25.発行)

ペンギンというのは不思議な生き物だ。
まずあのかたち。
そしてよちよち。ぺたぺた。
しかしあまりにペンギンのことを知らずにいた。
ペンギンの種類についても、その生息地などについても、
ペンギンは南極にいる!という貧困なイメージしかなかったりする。

それで、この『ペンギン大好き!』である。
まず、「森の妖精」といわれるフィヨルドランドペンギンの顔。
もう一度見たら忘れられない。
その他、本書には、キガシラペンギン、ハネジロペンギン、
フンボルトペンギン、マゼランペンギン、キングペンギン、
イワトビペンギン、ジェンツーペンギンが登場する。
どのペンギンもはなはだ個性的だ。

動物園などでよく見るペンギンは言わずとしれたフンボルトペンギンや
マゼランペンギン、ケープペンギンのどれかだそうだ。
なぜペンギンは暑い日本の夏も平気なのかとおもいきや
これらのペンギンは日本と同じ温帯に住んでいるので
日本の暑さくらいはへっちゃらなのだそうだ。

ではなぜ動物園のペンギンのところには
白塗りのコンクリートと人工氷山があったりするのか。
それ、戦後の南極ブームに端を発していて
最初は捕鯨船がつれてかえったアデリーペンギンやエンペラーペンギンが
「南極の可愛い鳥」として動物園や水族館の人気者になったらしいのだが、
やはり南極育ちのペンギンは日本では長く育てることはできず
かわって登場したのが、今やポピュラーになっている温
帯産のペンギンだというわけだ。

それでいまや、日本は世界一のペンギンファンなのだそうで、
動物園や水族館で飼われているペンギンの数は世界一。
ペンギンのキャラクターなども数多くあるし、
ペンギンについて書かれてある本も書店にコーナーがつくれるほどらしい。
それなのに、ペンギンについて自分があまりに知らずにいたとは恥ずかしい。

それで『ペンギン大好き!』を
ペンギンへのさまざまな誤解を解くためにとりあげてみたのだが、
それと同時に、最近読み始めた著者の川端裕人についても
いちどは書いておきたかったからでもある。

川端裕人のことをはじめて知ったのは、
『The S.O.U.P.』という、
コンピューターゲーム、インターネットを
題材にした物語を読んでからのこと。
これがなかなかにマニアックなところもあるにもかかわらず、
ストーリーそのものがとてもよくできている。

それで、川端裕人の他の作品などについて調べてみると、
ロケットやらマネーやら、たばこ、それから、
恐竜、クジラ、それからペンギンなど、
まあいろんなことに首をつっこんでいることがわかった。
今は、少年を主人公にした、「川」などをめぐる
『川の名前』や『今ここにいるぼくらは』などを読んでいるのだが、
これがまたぼくのなかの少年を引き出してくれる面白さ。
川端裕人という人、注目しておいて損はなさそうだ。

川端裕人のいろんなことは、また別の機会にして、
やはり今は「ペンギン」の話。
ちょうど(まだ見てないのだけれど)
『皇帝ペンギン』という映画が少し話題になっていたので、
近いうちに見ようとおもってパソコンのなかに
その映画のデータを入れてある。

まだまだ「ペンギン」事始めの段階ではあるけれど、
ううん、ペンギンというのは奥が深いなあ、というのが実感。
地球上からどんどん数を減らしている種類が多いようだが、
あのよちよち、ぺたぺたのペンギンについて
もっともっと多くの人が関心をもって
「ペンギン大好き」になってももらうことで、
なんとか生息地の環境を破壊しないような方向に
いってほしいと願わずにはいられない。