風のブックマーク2

 カール・ケーニッヒ『動物の本質』


2006.6.20

 

■カール・ケーニッヒ『動物の本質/ルドルフ・シュタイナーの動物進化論』
 (塚田幸三訳・由井寅子日本語版監修/ホメオパシー出版社 2006.5.30.発行)

動物の進化についてのシュタイナーの視点を知りたいと思う人にとって、
そして、シュタイナーの『宇宙言語の協和音』を感動をもって読める人にとって、
得難い宝物とでもいえる内容が満載されたカール・ケーニッヒの講義集が
『シュタイナー医学入門』も訳出されている塚田幸三さんによって訳された。
もちろん、本書の内容は『農業講座』や『精神科学と医学』などとも深く関連 してくる。
訳文もたいへん的確で、理解をしっかりささえてくれている。

著者のカール・ケーニッヒ(1902-1966)は、シュタイナーの影響を深く受け、
医師として、治療教育、社会療法に取り組み、キャンプヒル運動に深く関わった。
本書は、1963年の夏、動物進化について行った12回の講義の記録であり、
カール・ケーニッヒの生誕100周年を記念して出版されたという。

その記念出版を行ったDr.ピーター・エンゲルによる「はじめに」には、
なぜケーニッヒ博士が動物学者でもないのに、
動物とその進化、そしてその人間との関わりについて
このようにまとまった講義を行ったのかについて、
シュタイナーがオイゲーン・コリスコに新たな動物分類を示唆したことで、
(コリスコは、『精神科学と医学』のなかでも登場しているキーマンでもあります)
コリスコはそれに基づいて新たな動物学を開拓しようとしたのだけれど、
早逝によって果たされないままになっていたのを
先に進めようとしたのだということが書かれてある。

まさに、本書で読むことのできる内容は、
シュタイナーの示唆に基づきながら、
レムリア時代からアトランティス時代に到る、
つまりは、古生代から中生代、新生代に到る
動物の進化が、精神科学的な観点からとらえられた新たな動物分類のもとで、
しかも随時、人間の進化との関係のなかで深くかつ包括的に、
まさに大いなる「ポエジー」をもって繰り広げられている。

本書の内容をどのようにしてご紹介したらいいか
いろいろ考えてみたのだけれど、
日本語版の監修をされている由井寅子さんの「まえがき」に記されていることが、
本書を読みながら実感させられることでもあるので、
その部分を引用しながら、ご紹介に代えさせていただくことにしたい。

 動物の本質を知るには動物の本当の進化の歴史を知らなければなり ませんが、
本書はそれを知るうえで重要なものです。本書を読むと各動物の地球生命にお
ける役割、動物進化における役割、そして人間との関係における動物の役割に
心動かされます。
 青空にぽっかり浮かぶ雲を眺め、それが太古のエーテル的地球の海を泳いで
いた巨大な二枚貝の記憶をもとに形づくられていることを思うとき、また積乱
雲が巨大な巻き貝の記憶をもとに形づくられていることを思うとき、さらに、
これらの巨大な貝がこの大地の形成と深くかかわっていることを思うとき、時
空を超えた地球の歴史を感じ、雲の1つ1つがまるで生命であるかのように実
感されてきます。そして、同じく二枚貝が「閉じた目」であり、巻き貝の形の
なかに「耳と聴覚」が生まれ、足頭類の吸盤のなかに「舌と味覚」が生じ、棘
皮動物の五角形のなかに「頭の形態と記憶」が由来していることを思うとき、
自分のなかにあるさまざまな動物の歴史が実感されてきます。
 このような地球自身の力と歴史から成長した「地球的動物」がいる一方で、
人間とのかかわりのなかで、人間が進化するために捨てられた人間の性質の一
部を担った「人間的動物」がいます。たとえば、サメは私たち人間の貪欲さと
嫌悪を担い、爬虫類は、人間の堕罪の目撃者として存在し、哺乳類は人間の堕
罪の運命の重荷を負うものとして存在していると著者は言います。すなわち、
哺乳類の形態、機能、行動のなかに人間の堕罪が刻まれていると。これら「地
球的動物」も「人間的動物」もともに人間存在の基盤をなすものです。両親や
祖先よりも、もっと底辺の部分で私たち存在を支えてくれているもの なのです。
ケーニッヒ氏が言われるように、私たちは動物たちに永久に忘れることのない
感謝の気持ちで頭を下げなくてはならないのです。

本書の内容については、できれば
そのうちにノートにまとめてみることにしたいと思っているが、
やはり実際にこれはじっくり読んで感動するに越したことはない。
シュタイナー理解に不可欠な要素でほかで読めない内容が満載しているし、
こういう良書ほど、ともすれば絶版の憂き目にあいかねないので、
ぜひ早めにお求めになることをお勧めしたい。
ぼくにしてはめずらしく購入のススメをしているけれど、
それだけの価値ある1冊であることは間違いないはずである。