風の本棚
高橋明男『ゲーテからシュタイナーへ』
2002.1.19
■高橋明男『ゲーテからシュタイナーへ』
(NOA企画/2001.11.3発行)
高橋明男さんが「霊学のための市民大学」の活動の開始にあたり、
『ゲーテからシュタイナーへ』という冊子をだされた
ということを知ったので、早速読んでみました。
いくつか疑問点があったので、それについては
早速ご本人に直接ぶつけてみたところなので、
その点は、またどこかでご紹介することにしますが、
シュタイナーの人智学への姿勢として、
シュタイナー思想を特別なものにしてしまわないこと、
自由の基盤としての「考える」「知る」ということの大切さ、
「シュタイナー業界」に関する疑問、
一人ひとりがシュタイナー思想を理解しようとすることが必要であること、
そして「思想を開く」ことが重要であるということ、
そして、高橋明男さんがはじめようとされている
「霊学のための市民大学」には「講師」はいない、ということ、
また、「個別の私」と「普遍の私」という二重性のなかで、
「個別の私」に立脚した「普遍の私」へむかう「知」への方向づけなど、
非常に共感するところがたくさんありましたので、
ご紹介させていただくことにしました。
以下、いくつか引用紹介させていただきます。
僕自身の反省を含めて言えば、これまでの「シュタイナー業界」では、
一人ひとりが本当に理解することよりも、「いい人であること」「当たり
障りなくしている」ことのほうが重んじられてきたように思います。誰か
の講演を聞いて、「これは間違っている」と思っても、何も言えずに不満
だけを抱えて帰ってくる自分がいました。うっかり異論を唱えたり、「間
違い」を正そうとすれば、「あの人はまだ人格的に未熟だ」といった目で
見られてしまう。そういう空気が、日本だけではなく、世界のいたるとこ
ろで、シュタイナー思想を学ぶ人々の間に蔓延しているように感じます。
何よりも、この状況を打破したい。そのためには、一人ひとりがシュタ
イナー思想の基本的な考え方を本当に理解することが必要です。疑問があ
ればそれを率直に提出し、いくらでも議論する。そして一歩一歩共通の理
解を積み重ねていく。そういう努力が当たり前になされるようになって初
めて、シュタイナー思想は「特定の集団」の思想から、一人ひとりの個人
の「私の思想」に変わるのです。シュタイナー思想を一人ひとりの個人の
手に取り戻さなければなりません。そのとき、シュタイナー思想は、世界
のさまざまな思想・芸術・宗教の流れと切り結ぶことができるようになる
でしょう。そのとき初めて、シュタイナー思想が本来もている大きな可能
性を発揮することができるでしょう。
僕はそのような努力を「霊学のための市民大学」と名づけました。そこ
での大前提は、この市民大学に参加する人たちは、みな完全に対等である
ということです。まさにこの「対等」ということ、一人ひとりの個人の絶
対的価値ということこそ、シュタイナー思想の核心をなしているのです。
それを僕は「私」の原理と呼んでいます。
以前、僕は「霊学のための市民大学」について、そこでは「誰もが講師
であり、学生である。講師と学生の役割はそのつど入れ換わる」と書いて
いました。しかし、いま僕はこの表現を次のように改めます。この「霊学
のための市民大学」には「講師」はいないのです。すべての参加者は対等
な「探究者」としてそこに関わります。「探究者」の一人ひとりは、自分
のテーマを持ちよって「研究発表」をすることはあるでしょう。そのとき、
さらなる探究のためにカンパや喜捨を求めることもあるでしょう。しかし、
誰か特定の人物が「講師」として教える側にまわることはありえません。
どんなに貴重な経験や知識を持っている人でも、この「市民大学」では対
等な探究者の一人なのです。(P7-8)
ぼくのように、シュタイナーに関わっているとはいっても、
最初から組織とか権威とかいうのを無視して
自分勝手にこうしてやっているのとは違って、
さまざまなかたちで「シュタイナー業界」に関わってこざるをえず、
そのさまざまを見てきたであろう高橋明男さんがこうしたことを表明し、
本書の最後には「これからは妥協はしません」と述べているわけで、
その取り組みには並々ならぬ覚悟が感じられます。
その最初の「宣言」が本書だということで、
やはり一読の価値はあるのではないかと思います。
さて、本書の注文は書店ではできませんので、
以下の宛先に直接注文してください。
料金は1,000円+送料180円です。
料金は郵便振替で
NOA企画(Projekt zur Neuorientierung der Anthroposophie)
郵便振替口座 01750-2-32423
|