中山真知子『いけばなの起源』


2002.2.11

 

■中山真知子『いけばなの起源/立花と七支刀』
 (人文書院/2002.1.25発行)
 
いけばなの源流には、あの石上神宮に伝わる七支刀があった!
という驚くべき内容の書。
 
いけばなについてはまったくの門外漢なのだけれど、
いけばなの原型であるという「立花(たてはな)」の型が、
「七支刀」の形と同じ七枝の型をしていて似ている、
というところから、それを検証しているのが本書。
 
著者は、大学時代には美術を専攻。
アールヌーボーの芸術運動への関心から欧州へ留学、
「曲線美に追求からモンドリアンの直線美に到達。
曲線でも直線でもない自然の形状、植物自体の簡潔性と調和の認識を得て」
いけばなを始め家元資格を取得した後、マレーシアのペナン島へ。
「日本の伝統形式に則ったいけばなを紹介する傍ら、
アジア文化圏の共通性から日本文化を捉えなおす比較研究」を
行なっているという。
 
石上神社の七支刀には、以前から関心があって、
それを解明できるならば、古代日本に伝わる霊的潮流に関しても
なにがしかのことが明らかになるのではないかと思っていたのだけれど、
本書は、むしろこの七支刀の型から発しているのが「立花」であり、
それには、道教的な北斗信仰があったことも明らかにしながら、
それとも深く関係して、日本文化においていかに「七」ということが
風俗、民俗、宗教、茶、花、能、建築などにおいても
重要視されてきたのかということについても検証を加えている。
 
日本文化には道教的な影響が色濃く、
そこには北斗信仰がさまざまに影響しているということは
これまでにも指摘されていたことなのだけれど、
あの七支刀との関係ということは念頭になく、
むしろ七支刀は、ユダヤの燭台メノーラに象徴的に現われている
カバラ的な関係ということが気になっていた。
それが、道教的な北斗信仰ともリンクしていて、
さらに日本文化においてさまざまに展開されてきているということは
目を開かせられる思いがした。
 
         道教の神が持つ七星剣。この姿に魅せられて、なんと多くの場所を
        訪ね歩いたことか。天界の最高神・玉皇上帝が持つ笏に刻まれた七つ
        の星。祭りの際に立てられる刀剣に記された七つの点。
         当地で出会った道教の北斗七星の信仰をよりどころに、時空をこえ
        て日本文化に接した。
         石上神社の七支刀、四天王寺の七星剣、伝統いけばなの立花、栂尾
        高山寺の七堂、比叡山山頂の七星降臨処、北斗七星を象る能舞台など、
        じつに新鮮に迫ってくる多くの事象。日本の歴史と文化の根底に横た
        わる「七」の象徴的存在に目覚めた。その「七」のシンボルをたより
        に、アジアから日本を経たあと、再び西方の旅に出かけた。
         インドからヨーロッパの旅のなかで見た、膨大な収集物で知られて
        いる大英博物館、ルーブル美術館、ギメ東洋美術館、ニューデリー美
        術館など、そのなかに収められている七子鏡、印章、墓などに七つの
        円があった。
         この書は、「七」と「北」という視点を通して、石上神社の宝刀で
        ある「七支刀」と伝統いけばなの「七枝の型」が酷似していたことか
        ら、それらを検証することにより、いけばなの起源を論証したもので
        ある。
        (P184-185)
 
ところで、シュタイナーは、黄道十二宮のことを除けば、
北斗七星やオリオンといった星に関する示唆はしていないようだが、
その部分が日本文化においては重要な観点になっているというのは興味深い。
北斗信仰と天台密教というのも関連しているようで、
そうした観点について見ていきながら、
シュタイナーの、おそらく「あえていわなかったこと」、についても
そこから逆照射してみる試みも面白いのではないだろうか。
 
 

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