特集「高野文子」(ユリイカ2002.7)


2002.7.3

 

■特集「高野文子」(ユリイカ2002.7 /青土社)
 
これはいきなりのびっくり、「高野文子」の特集である。
シュタイナーの特集よりも。
 
高野文子の漫画に最初に出会ったのはたぶん「別冊奇想天外」で、
たぶん「ふとん」だったのではないかと思う。
「ねえ ねえ ねえ かんのん」
「めりんす ぶとん ほしいな」
というの。
「ふとん」が「別冊奇想天外」に掲載されたのは1979年のことらしいから、
もう23年もむかしのことになる。
 
この「ふとん」も収録されている「絶対安全剃刀」という
高野文子の最初の作品集がでているのが昭和57年1月19日。
と、今も大事にもっている作品集には書かれてある。
 
今回のユリイカの特集には、「高野文子全著作解題」があって、
あらためてその「全著作」を見てみるとやはりその寡作さが目立つ。
つい先日刊行された「黄色い本」は、
1995年に出た「棒がいっぽん」からすでに7年も経っている。
にもかかわらず、やはりこうして特集にさえなってしまうということは、
根強いファンがいるらしい。
というより、数えるほどしか、こういう個性的な漫画家はいないということかもしれない。
そういえば、内田善美という漫画家も素晴らしい個性をきらめかせていたが、
いったいどこにいってしまったのだろう。
 
やはり、漫画家もそうだけれど、
ミュージシャンにしても、
真に創造的なものをめざそうとすると、
きわめて寡作になってしまうか、
擦り切れてしまうことになるのかもしれない。
 
ところで、このユリイカの特集にある
大友克洋と高野文子の「討議」がむやみなほどに面白い。
これは必読!
 
そういえば、高野文子の語りというのをはじめて目にした。
とてもクールなのに不思議な熱さがある。
それから、昭和32年生まれらしいのでぼくとほとんど同世代。
そういうのもあって、ずっと気になる存在だったのかもしれない。
 
この特集には「奥村さんのお茄子」という作品が掲載されているが、
その前置きのなかで、高荷文子は
「私の特集が組まれるのもこれが最初で最後でしょう」と述べている。
そうかもしれないが、意外にそうでもなさそうな感じもする。
 
今の時代、コピー的なものばかりが跳梁しているので、
そんななか、こうまでに頑固な個性というのは、やりにくいだろうけれど、
それだけに、こうして不思議な受け容れられかたをする可能性もあるのだろう。
 
ともあれ、いきなりのびっくりの必見特集!
もちろん、まだ高野文子の漫画をちゃんと読んでない方は、
最初の作品集からじっくりどうぞ。
 

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