いしいひさいち『現代思想の遭難者たち』


2002.6.23

 

■いしいひさいち『現代思想の遭難者たち』
 (講談社/2002.6.15発行)
 
1996年から1999年に講談社から刊行された
『現代思想の冒険者たち』全31巻の月報に毎号掲載されていた
いしいひさいちの四コマ漫画だけは、各巻が刊行されるごとに
(買わない号のほうがずっと多かったので多くは立ち読みとなったが)、
楽しく読んでいた。
(中身よりずっと面白かったりして・・・(^^;))
印象に残っているのは、たとえば、「クワイン」の巻。
この駄洒落があまりに気に入ったので、
ついついこの巻、買ってしまった(^^;)。
 
        君の考えはよくわカルナップ
        ケンカはよそう
        夫婦ゲンカは犬もクワイン
 
その激しいまでの(^^;)駄洒落と妙に深い示唆・・・。
しかし、今回の本には、この四コマ漫画は掲載されてなくて、
ほとんどが書き下ろされたもののようで、
朝日新聞の四コマ漫画もなかなかのものだけれど、
この希有な現代思想パロディの力作ぞろいには、
あらためていしいひさいちのすごさを実感させられた。
 
そういえば「おじゃまんが」以来、いしいひさいちの漫画には
なんだかんだとずっとつきあってたりもする。
やはりこの力量、ただものではない。
強引な駄洒落もただものではない。
と、駄洒落を習慣化している私は思うのである、うん。
 
しかし、『現代思想の冒険者たち』に対して、
『現代思想の遭難者たち』というのは、
なかなかに示唆的で、
戯画化された『現代思想の冒険者たち』の姿を
その、いしいひさいち特有のキャラクターづくりが
浮き彫りにしてくれているところがある。
もちろん、これでそれぞれの思想家が理解できるわけでは決してないけれど、
こういうノリもあったほうが、それぞれの思想を
いちど距離をとりながら再認識することもできるように思う。
 
ハイデガー、フッサール、ウィトゲンシュタイン、カフカ、
ニーチェ、マルクス、フロイト、ユング、レヴィストロース、
アルチュセール、バルト、ラカン、フーコー、ドゥルーズ、デリダ、
バタイユ、ジンメル、ベンヤミン、アドルノ、アレント、ガダマー、
ハーバーマス、ロールズ、クリステヴァ、ホワイトヘッド、バシュラール、
クーン、クワイン、メルロポンティ、ルカーチ、エーコという
これらの34人の現代思想家たちについては、
ジンメル、ロールズ、クワイン、以外にはすでに25年近く前、
かつて20歳頃になんらかのかたちで興味をもっていたのだが
こうした思想家たちに「遭難者たち」として出会い直すのは
なかなかに感慨深いものがある。
そして、その後にであったシュタイナーという神秘学者の巨大さに
驚かされることにもなった。
しかしこういう思想家たちの思想から影響を受けていたからこそ、
シュタイナーのすごさもわかったところがあるので、
やはりこういう思想を通過儀礼として受け容れておく必要性というのも
現代人にはあるのかな、とも思った次第。
 

 ■風の本棚メニューに戻る

 ■神秘学遊戯団ホームページに戻る