河合隼雄・吉本ばなな『なるほどの対話』


2002.5.3

 

■河合隼雄・吉本ばなな『なるほどの対話』
 (NHK出版/2002.4.25発行)
 
河合隼雄の対談や鼎談、講演など、
どれをとっても素晴らしい内容のものが多いのだけれど、
この「対話」はとりわけある種の深さがあるように感じられた。
 
河合隼雄のほうからNHKの番組での対談相手として
吉本ばななを希望したことがきっかけとなって
(おそらくご自分のほうから対談相手を希望することは稀なのではないだろうか)
この本が出ることになったというだけあって
これまでの河合隼雄とは少し異なった色合いの部分が
吉本ばななとのやりとりのなかでかいま見えたように感じた。
 
おそらく吉本ばななを希望したというのは、
その創作を通じてアクセスするところが
河合隼雄が現代日本において危機感をもっているところと
切実なかたちで密接に関わっているからなのだろう。
 
そうした切実さがさまざまなテーマのなかで、
ほのぼのと語られていくシーンを想像するのは楽しく、
まるでその対話の場所に自分もいるかのように錯覚しながら、
その話の深さに思わず涙が出そうになったりしていた。
 
ところで、なぜ「なるほど」の対話なんだろう。
不思議なタイトルだな。
そう思いながら読んでいるうちに、
最後の方になってそのわけがわかって、
(それが知りたい方はP245-246を)
そうしたユーモアまでふくめて楽しみながら
心あたたまる言葉を読み進められる対話集になっている。
 
この対話で語られたことのなかで、
いまもぼくの心のなかに響いていることがいくつかあるので、
それについてその響きが少しかたちになりそうであれば、
ノートに書いてみることにしたいと思っている。
しかし、こうして平易に語られている話は
実のところ、とてもとても深く、その底などは
簡単に「なるほど」見えてくるようなものではないのだろう。
 

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