《悪》
2014.1.16


ひとは天使ではない
だから天使のまねはしないでいよう
ひとがひとだということは
ひとでしかできないことをするということだ

天使よりも堕天使が
処女よりも娼婦が
深くひとへと降りていけるように
わたしはみずからの深みへと降りていこう

悪に出会ったならば
その悪を名指すまえに
みずからの悪へと降りていこう
そうすることではじめて
その迷路を抜ける道を見出すことができるだろうから

私たちは囚われ人なのか
そう問うことはじめて
みえてくるものがある
怒りや妬みに囚われていることを知れば
ひとはその悲しみとともにいて
そこから解き放たれる喜びに満たされることもできるから

ひとは天使ではない
堕天使は天使から自由になろうとした
天使は自由ではない
だからだ
けれどひとは堕天使から学ばねばならない
みずからの悪から学ばねばならない
陰影を湛えた深い慈しみの光と熱で
悪を溶かさなければならない

ひとは天使ではない
だから天使のまねをしてはならない
自由を手放してはならない
たとえそこに苦しい陥穽が待ち構えているとしても
ひとはひとのなかで愛へと向かわなければならない