風のDiary
2010.12.9.Thu.
PISA

12月7日に公表された国際学習到達度調査(PISA)の結果で、
上海が世界のトップに立ち、
韓国をはじめ、香港、シンガポール、台湾、日本も好成績だったそうだ。
(PISAとはProgram for International Student Assessment)

日本では、「ゆとり教育」を見直し読解力を高めるという目的で
PISA型学習が全国的に推奨・導入され、
ぼくも昨年、その啓蒙イベントのディレクターをしたことがあったのもあり、
今朝の新聞でその報道を見て、少し考えるところがあった。

そんななかで、早速そのことについて、
「内田樹の研究室」でコメントがあり、興味深く思った。

それによれば、PISAのスコアには、
次のようなファクターが関与しているだろうということである。

  (1) その国の階層化の進行度
  (2) その国の国民的均質性の高さ
  (3) その国における資源配分のフェアネスの程度
  (4) その国の隣国との軍事的・外交的緊張関係の有無
  (5) 「華夷秩序的先富論」(中国)や「先駆的エリートによる一点突破全面展開戦略」(韓国)
     のような資源の傾斜配分システムについての伝統的国是の有無

日本ではPISA型学習の導入にあたって
先日までは「フィンランドに学べ」といっていたそうだが、
今回、「上海に学べ」とか書けないだろうとのこと。
たしかに。
「学力の優劣」は「ナショナルな威信の問題」のようである。

ちなみに、フランスの通信社の配信記事では、
「フランスの高校生の学力」については一行も書いてないということである。

おもしろいことに、日本ではなんにつけ、
自国がどのように見られ、評価されているかに一喜一憂し、
さまざまに過剰なまでのリアクションを行う。
スポーツ選手でも「日本人選手」がいかに活躍し、評価されたかを細かく報道する。

「我」も「己」も使い方でYouの意味になったりもするが、
相手の評価に反射させて自分を見なければ、
自分の内に基準を設けることができないということが
国全体としてもあたりまえのようになっているのだろう。

しかし、「ナショナルな威信の問題」としてのPISAのナンバーワンが
上海になっているわけで、それに反射させて、事を云々させることは
どこかで分裂してくるところがあるのだろうが、
記事にもそこらへんの記述がないように、
あえて見ないようにしているということなのだろうと思った。

そういう態度というのを個々人のさまざまなテーマの反応として見ていくのも
面白いかもしれない。
ある目標に向かって疑いもしないで猛進していたところ、
その目標のところに意外なものがあった・・・というような。
まあ、日本人は別の目標にすげかえて
知らぬ顔でいるということも得意なのだけれど。

ともあれ、「ナショナルな威信の問題」とかいうのは
個人的にいえば、やれやれ・・・という印象がある。
ゴールを決めて、人さし指で、イチバン!と誇示するとか、
まあ、やりたい人にさせておけば・・・という感じである。