note17:
ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学の対象となる空間と
アントロポゾフィー的な空間認識の違い
地上的な空間に対して天上的な空間を見出すこと

<ジョージ・アダムス 『エーテル空間』からの引用>

 私たちは近代幾何学の観点から、反空間の幾何学を完全な厳密さで完成させることが
できます。いわゆる非ユークリッド幾何学は、ユークリッド幾何学の空間形態を根本的
に変えることなく、いわば歪めることによって得られました。しかし私たちは純粋に数
学的な意味で、ユークリッド空間を直接的に反転させることになるでしょう。そしてそ
うなってこそ、近代の数学者の多くがいささか不快に感じていた欠落が埋められること
になるのです。
 彼らはまず最初に“射影幾何学”の分野 ー 私が原空間と名づけたいと思っている分
野 ー で、点と平面との均整のとれた美しい対極性を体験しました。ユークリッド幾
何学はその幾何学のなかから、“無限遠”のものとしてのただひとつの宇宙平面を理念的
に取り出すことによって生まれました。こうして、点と平面のあいだにあった相関的な、
完全に均衡した関係性が失われることになりました。なぜならユークリッド空間は、こ
のただひとつの平面と絶えずかかわることになったからです。またそこには、この平面
に対応するただひとつの点は存在しませんでした。原空間の理念に接して初めて体験さ
れた調和的な場に、純粋思考には説明することのできないひとつの一面性が入り込んで
きたのです。
 この問題はアントロポゾフィーの見地に立った見方によってこそ答えられることにな
るでしょう。やはり私たちは、こうしたことのすべてを体験している人間へと、つねに
繰り返し立ち戻らなければならないのです。現代に生きている人間の意識は(…)その
生活空間をもっぱら地上的ー物質的に、点的な世界として体験しています。しかし私た
ちの純粋思考は、このような一面的な意識を乗り越えることができます。つまり点と平
面、地上的な極と天上的な極とが理念的に均衡している、近代幾何学の“原空間”を発見
することができるのです。物質空間のまさに反対の極である空間を見出すことによって、
言い換えるなら、一面的に地上的な空間に対して一面的に天上的な空間を見出すことに
よって、私たちの地上的なものの見方はさらに克服されていくことになるでしょう。
(P.37-38)

<note17>
◎このnote17は、繰り返しになるが、
ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学の対象となる空間と
アントロポゾフィー的な空間認識との相違を確認することを主な内容としている。
◎非ユークリッド幾何学は、ユークリッド幾何学の空間形態を歪めることによって得られたが、
空間形態の根本的なところは変えていない。
◎ユークリッド幾何学が、「平面上の幾何学」のに対して、
非ユークリッド幾何学は「曲面上の幾何学」であるにすぎないといえる。
平面を扱う幾何学を拡張して曲面を扱えるようになったというだけ。
◎しかし、アントロポゾフィーの観点では、
「純粋に数学的な意味で、ユークリッド空間を直接的に反転させる」ことになる。
この「反転」というところが重要である。
◎ユークリッド幾何学は、射影幾何学で体験される点と平面の対極性から、
「“無限遠”のものとしてのただひとつの宇宙平面を理念的に取り出すことによって生まれ」たが、
そのことで点と平面の均衡した関係性が失われることになった。
◎つまり、ユークリッド幾何学は、どこまでも無限に拡がっている
抽象的な「平面」にだけ関わっている一面的なものでしかない。
◎それに対して、アントロポゾフィーの観点では、そうした一面的な意識を、
「点と平面、地上的な極と天上的な極とが理念的に均衡している、近代幾何学の“原空間”を発見する」
ことによって乗り越えることができる。
◎私たちは、普通の生活空間的な意識においては、地上的物質的な空間を生きているが、
その反対の極である「天上的な空間」を見出すことで、地上的な見方の一面性を克服することができる。