クレマン・ジャヌカン

2013.5.5

「鳥の歌(Le chant des Oyseaulx)」
「Quelqu'un me disoit l'aultre jour」
「Herbes et fleurs」

今日の音楽は、フランス・ルネサンス音楽の作曲家、クレマン・ジャヌカン(Clément Janequin, 1480年頃 – 1558年)。

聖職者ではあったものの晩年まで不遇で、音楽家としての確かな地位を得たことはなく、
フランス宮廷の、もっぱら世俗歌謡の作曲家として有名である。
ジャヌカンはシャンソンの専門家であり、このジャンルを創り出した作曲家のひとり。
作品は、言葉というよりも擬音語や擬態語を取り入れている。
例えば、いわゆる「オノマトペー」のように、無意味な言葉の羅列が鳥のさえずりを形作っている。
オノマトペーを用いたシャンソンのうち、
代表的なものは『鳥の歌 Le Chant des Oiseaux 』、『狩 La Chasse』、『戦争 La Guerre : La bataille de Marignan』。
『鳥の歌』は、ロンドー詩形による言葉と鳥の声の混成体で成っており、
個別の鳥の声はフランス宮廷の個々人の特徴を表現している。
『狩』はイヌを使った鹿狩りの描写。
『戦争』はイタリア戦争の描写。
恋愛歌曲『みじめな心 Le Pouvre Cœur』や
奔放な性生活を諷刺した『ある日奥方が眠りにつくと Ung jour que Madame』のような歌曲にも、
オノマトペーが歌詞の途中に織り込まれたり、
主旋律を伴奏するパートの囃し文句に利用されたりする例もあり、
庶民のたくましさやしたたかさ、猥雑さなどが効果的に表現されている。

それでは、オノマトペーを用いた代表的なシャンソンから、「鳥の歌(Le chant des Oyseaulx)」。

以下、この曲について、今谷和徳『ルネサンスの音楽家たちI』(東京書籍/1993.10.29)より。

   題名の通り、ここでは、五月の最初の日、うららかな春の季節に野山で鳴いている鳥たち、
  つむぎ、小夜鳴き鳥、かっこうなどの鳴き声が、擬音効果たっぷりに歌われてゆく。しかし、
  ここでジャヌカンの本領が発揮されているのは、単にこうした鳥たちの鳴き声だけを聞かせ
  ているわけではないという点だろう。鳥たちの行動を、人間の営みになぞらえているのであ
  る。たとえばかっこうという鳥は、他の鳥の巣にちゃっかりと卵を生んで育ててもらう、と
  いう習性をもっているが、このことからかっこうは、寝取られ亭主の代名詞にもなっており、
  ジャヌカンはそうしたことを歌い込んでいて、結局このシャンソンは、鳥たちの鳴き声を面
  白おかしくおかしく聞かせながら、実際には市井のの男女の愛の姿を歌っているのである。

演奏は、Dominique Visse & Ensemble Clément Janequin。

http://www.youtube.com/watch?v=x-dkdgzYZbQ

続いて、「Quelqu'un me disoit l'aultre jour」
演奏は、Dominique Visse & Ensemble Clément Janequin。

http://www.youtube.com/watch?v=MiNdoc0K20Q&list=PLABD8CDA5A18BB47F

そして、「Herbes et fleurs」。
演奏は、Dominique Visse & Ensemble Clément Janequin。

http://www.youtube.com/watch?v=Ma_xyXmS3nc&list=PLABD8CDA5A18BB47F