現代詩手帖3月号 特集『北欧現代詩と出会う』

2013.3.19

 

特集が、『北欧現代詩と出会う』ということもあり、久しぶりに現代詩手帖(3月号)を読んでいる。
これまでほとんどふれることのなかった、現代アイスラン ド詩集、現代スウェーデン詩集、
現代ノルウェー詩集、現代フィンランド詩集、
現代フェロー諸島詩集の各アンソロジーが収められているほか、
先日シュタイ ナーの関係でご紹介した、
フィンランド生まれ(スウェーデン語が母語)のスーデルクランの記事もある。

北欧には惹かれるものがある。
ほとんど知らないからというのも確かにあるのだけれど、それだけではないないかを感じる。
ピアニストの舘野泉さんもフィンランド在住。
そのアルバムで、ノルドグレン、ラウタヴァーラ、コッコネンなど、
北欧の近現代作曲家もときおり聴き、親しむ ようになっている。
北欧系のジャズも、その不思議な透明感のためだろうか、
気に入っているものが思いのほかたくさんあったりする。

さて、この特集で紹介された詩にはたくさん気に入ったものがあったのだけれど、
とくにデンマークの詩人「インガ・クレステンセン」の『蝶の谷 レクイエ ム』の世界に魅了された。
霊魂、プシューケーも意味する蝶の変態、そして乱舞・・・のイメージからくるソネット。
かなり長い長編詩だが、その最初だけご紹 介してみる。

 舞い上がる 惑星の蝶たちが
 大地の温かな体内から生まれた有色の塵のように
 辰砂色の、黄土色の、金色の、燐黄色の
 化学元素の群れが立ちのぼる

 この翅の煌きは
 空想で眼にした光の粒子にすぎないのか
 それとも間欠的な稲光にはじけてしまった
 幼年時代に夢見た夏の日なのだろうか

 ちがう、これは我が身を色塗る光の天使
 黒アポロ・ムネモシュネーのように
 ベニシジミ、オオイチモンジ、キアゲハのように

ぼくのなかで惑星の蝶たちの乱舞が夢のように立ち上がる。
さまざまな色の鱗粉をきらめかせながら
ぼくの魂が生と死をひらひらとくるくると舞っているのを感じる・・・。