「バロック音楽」エポックをめぐって

2013.3.1


ここ2ヶ月ほど、バロック音楽を毎日のように紹介している。
だれかに紹介しているというというよりは、自分に紹介しているようなものだけれど。

シュタイナー教育に、「エポック授業」という、
毎朝、最初の2時限(100分間)同じ教科を3~4週間にわたり集中的に学ぶというのがあるが、
そのように、まとまった期間、継続的にあるテーマを決めて、
自分だけで「一人エポック授業」とでもいえるようなことをするここ数十年の習慣があって、
今回のバロック音楽を調べながら聴くというのもそのひとつ。
専門化の方々からいえば稚拙なレベルかもしれないが、
なんでもありというか、興味のあることなら、別に気どる必要も、
迎合する必要も、また利害関係もまったくないので、自由にお遊戯できるのが楽しい。
以前は、主にMLとホームページが場所になっていて、それ以前はただ自分で遊んでいただけだけれど
何十年もやっているとそれなりにいろんなことが深層部分でリンクしあってきたりして、
ようやく最近になって、それまで自分が行き当たりばったりに観てきたことが
大きな地図のなかである種の絵のように見えてくるようなともろもある。歳を経るのも悪くない。

さて、バロック音楽であるが、かつてあったNHKFMの
「朝のバロック」を聴いていたことがあったが、
そのときには聴くだけでなにがなんだかわからないままただ聴いていた。
その後、いろいろ音楽の本を読んだりもし、また自分でレコードやCMを買ったりして、
作曲家や曲、演奏者などについて少しずつ知るようになった。
バロック音楽だけについてまとまって書いてある本はそんなになさそうで、
手元にあるのは主に次の2冊。

・磯山 雅『バロック音楽 豊かなる生のドラマ』 (NHKブックス)
・皆川 達夫『バロック音楽』 (講談社新書。後に、講談社学術文庫)

以前読んでほとんど忘れていたりもしたが、今回の「バロック音楽エポック」を機に、
少しずつ読み返してみたりもしている。
やはり、実際にいろんなバロック音楽を作曲家にそって聴いていくと、なんといっても納得度が違う。
YouTubeのおかげでもある。
とはいえ、なかなかコレという演奏を見つけるのはむずかしいのだけれど。

さて、「バロック」という概念を美術史から音楽に応用したのは
ドイツの音楽学者クルト・ザックスである。
磯山雅『バロック音楽』によれば、
「ルネサンス美術に対してバロック美術が構成するような線的と絵画的、平面と深奥、閉じられた形式と開かれた形式、明瞭性と非明瞭性といった対比が、ルネサンス音楽とバロック音楽の関係にも適用できる、とザックスはいうのである」という。
ちなみに、美術の分野では、16世紀のルネサンスからバロックへの移行期にあたる芸術を
「マニエリスム」と呼ぶが、音楽ではその名称はあまり使われないようである。

150年間ほどの間を通じてバロック音楽が持っていた基本的な特色は
「たえず動いている低音声部、すなわち通奏低音(バッソ・コンティヌオ)をもつこと」だという。
この時代を「通奏低音時代」だという人もいるそうである。
「通奏低音は、ふつう複数の楽器で、すなわち、
低音の旋律楽器と和音楽器の協力によって演奏される。
旋律楽器がチェロ、オルガン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、ファゴット、コントラバスなど。
和音楽器はチェンバロ、オルガン、リュートなどで、いろいろな組み合わせが可能である。
「こうした通奏低音ががっちりした土台を築き、その上で複数の上声部が、豊かな彩りを身にまといつつ対立し競い合う。こうした広い意味でのコンチェルト風の音楽が、
バロック音楽のもっとも典型的な楽曲であった」。