藤山直樹『落語の国の精神分析』

2013.2.3

藤山直樹『落語の国の精神分析』(みすず書房/2012.11.9)。(2013.2.3)

自らも落語を演る精神分析家として落語を読み解き、
また落語家という人間の生き方に迫る。
そんな落語評論が面白い。
立ち読みですませようと思ったものの、あまりに興味深いのと、
なにより立川談志の弟子の談春との対談があるのもあってじっくり読むことに。
落語とは「業の肯定である」とした談志論としても読んでおく価値がある。

ちょうどユリイカの2012年2月号の特集が「立川談志」で、
年末年始に、「立川談志 ひとり会 落語ライブ/第一期 '92~'93・第二期'94~'95」の
DVDを観ていたのもあって、
なおのこと落語の面白さにはまってしまったという感じでもある。

以下、談春との対談から「業の肯定」についてのところを少し。

  藤山/普通の医学というのは、なんとかして患者さんの痛みや苦しみを
  取りのぞきましょう、と。ただそれだけです。精神分析は、苦しい人が
  もっとちゃんと苦しめるようになろう、苦しみから何かを生みだせるよ
  うになろう、もっととことん苦しむ能力を拡大しよう、ということなん
  です。
  談春/自分は何で苦しんでいるのか、もっと突き詰めて向かい合いまし
  ょう、と。
  藤山/人間の業の肯定っていうやつになりますね。(中略)
  藤山/ふたりで普段やらないような心の部分を動かしていくことを延々、
  毎日毎日やるんですよ。そうすると、今まで単なる苦しみだたものが、
  じつはもっと別のことだということが急にわかったり、その人が前と違
  った感じに物事を見ていることに気づく瞬間があるんです。(中略)
  談春/それをうちの弟子とね、毎日やってるんですよ。