梨木香歩『エストニア紀行』

2012.10.15

梨木香歩『エストニア紀行』(新潮社)

『水辺にて』『渡りの足跡』に続く、
梨木香歩の紀行エッセイ『エストニア紀行』がでている。
ちょうど『考える人』の2012年秋号に
梨木香歩のロングインタビューが掲載されているので、そこから少し。

「旅というのは、実際に体を動かすという旅以外に、帰ってからもう一度反芻する、私にとっては内的な旅が続くというのがあります。それで全体の旅が完成する。・・・旅が終わるというのは、本当の目的の場所、ここだっていうところが見つかったときだと思うのです。」

梨木香歩の書いていることとは、おそらくほとんど関係がないだろうけれど、
こんなことを考えた。

内的にせよ外的にせよ、その都度、旅にはそれなりの目的地がある。
ときに、目的地が出発地点だったりもするけれど、
おそらくその地点は最初の地点とは同じであって同じではない。
移動することでなにかが変容する。
その意味で、たとえ故郷に帰るという行為もそこはすでに故郷ではない。
かつていたわたしももうどこにもいない。
けれど、それに気づくかどうかは別として、すべてはわたしになっている。